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次世代3次元半導体研究室の概要

次世代3次元半導体研究室について

長崎総合科学大学における先端半導体の教育は、西澤 潤一 先生※1に顧問教授・非常勤として昭和61年からはじまり、平成9年から小柳 光正 先生※2に引き継がれ現在に至っています。

集積回路(IC)に関する研究は、田中 教授※3がMOSIS(南カリフォルニア大学の試作半導体集積回路製造サービス)やVDEC(東京大学大規模集積システム設計教育センターの試作サービス,現d-lab)を利用して物理学実験に用いる検出器用ICを設計・製造し、平成9年から研究に取り組んだ本学学生が学会で成果の発表を行っています。ICの研究は、物理実験用途の他、無線用IC、医療用IC、半導体検査装置、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)向けなどの用途で研究機関や民間企業と共同研究を実施して、この分野に携わる学部、大学院の卒業生の輩出を続けています。

田中研究室の卒業生のひとりで本研究室の清山 教授は、大学院生の時、小柳先生が取り組まれている積層型3次元集積回路(3D-IC)の研究の知見を含めた講義、博士学位論文審査では小柳先生、安浦 寛人 先生(九州大学,理事・副学長)に加わって頂き、指導を頂いています。平成19年からは、東北大学大学院 工学研究科附属マイクロ・ナノマシニング研究教育センターの研究員として小柳先生のもとで本格的な3D-ICの研究に従事されました。通常のICは、シリコン表面にトランジスタなどの部品が平面(2次元=2D)に配置・配線されます。3D-ICは、機能毎に異なる複数のICを垂直方向に積み重ねて縦方向配線(TSV:シリコン貫通ビア)することで、ICを高密度、高性能、高機能にすることが出来、現在、世界で研究開発が盛んに行われています。これまでの研究の一例を挙げると、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の大型国家研究プロジェクト、技術組合超先端電子技術開発機構の「ドリームチッププロジェクト:車載用高速3D-ICイメージセンサの開発」、人工知能(AI)チップ開発加速のためのイノベーション推進事業「サイクリック学習機能を有する超低電力AIチップの開発」など、センサ、アンプ、メモリ、信号処理など異種ICを積層した3D-ICがあります。この他、疾患で視力を失った人の眼に埋め込んで視覚を再生する完全埋植型3D人工網膜、脳埋植型の脳神経プローブなど半導体技術の医療応用にも取り組んでいます。

半導体は、新聞やニュースなどで取り上げられている通り、工場などの産業機器や自動車、我々の身の回りで使われる家電製品などに必要不可欠であり、その重要性はエネルギや食料と同等であるとの認識が広がりました。自動車の製造が停止する事態を招いた半導体は、普通車1台で数十~100個も使われています。走行をより安全にする運転支援技術は、プログラムされた通りに制御する自動化から、センサを用いて情報を収集し人工知能(AI)なども活用して人間の仲介をせず機械が状況を判断して操作する自律化へと開発が発展し、より多くの半導体を必要としています。自動車の自動運転の他、ロボットやドローンなどの自律化には、センサで得た信号を増幅、アナログからデジタルへ変換、デジタルデータの演算、保存など半導体の役割は極めて大きくなります。

3D-ICは、身近な製品だとデジカメのイメージセンサやメモリで製品として提供がはじまり、テレビやスマホで見る画像の繊細さ、データ記憶量の急増など、皆さんが体感されている通りです。台湾積体電路製造(TSMC)の熊本進出やソニーグループの新工場建設など九州には、半導体関連企業が多く、この分野で働く人材育成のニーズが高まっています。
先端3次元半導体研究室では、小柳先生をはじめ、東北大学の田中徹先生、福島先生などの研究者と協力して、3次元集積化技術を用いた異種デバイスの融合など強みを生かした教育・研究を通して、半導体分野で活躍する人材育成に貢献します。

補足

※1:西澤潤一(1926-2018)、東北大学総長、東北大学名誉教授。半導体、レーザー、光通信の開発で業績を多数上げられ、IEEE(米国電気電子学会) medal、瑞宝中綬章をはじめ多数受賞。IEEE Nishizawa Medalが設けられるなど世界的な研究者としてご活躍。
参考:東北大学 萩友会

※2:小柳光正、東北大学名誉教授。大容量半導体メモリの基本構造を世界に先駆けて提案、3D-ICの概念を世界で初めて提案と試作に成功。IEEE medal、紫綬褒章、瑞宝中綬章など多数受賞。
参考:東北大学ニュース,3D-ICパイオニア

※3:田中義人、長崎総合科学大学 新技術創成研究所・所長、教授

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